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名古屋商工会議所 会頭 嶋尾正(しまお・ただし)氏に聞く/持続可能な経営へ/企業の価格転嫁支援/新たなビジネス、付加価値創出を推進

新型コロナウイルス感染症の影響が和らぎ、飲食や観光施設で人の動きが戻ってきた。ただ、エネルギーコストや原材料費が跳ね上がり、企業の利益を圧迫している。物価高への対応や経済の好循環へ向け、地域総合経済団体の名古屋商工会議所は、どう取り組むのか。嶋尾正会頭(大同特殊鋼会長)に聞いた。

「大企業で広がった賃上げの輪を中小企業にまで波及させることが必要だ」と話す嶋尾会頭
「大企業で広がった賃上げの輪を中小企業にまで波及させることが必要だ」と話す嶋尾会頭

―足元の景況感は

「最近の各調査をみると、『緩やかに持ち直し』という表現が多く使われているものの、業況感としては、やや厳しい認識をしている。飲食業など非製造業では、昼間の客足がコロナ前の水準まで戻ってきているようだが、夜間はまだ戻っていないという声もある。また、人手が足りないため、あえて稼働率を落として営業している店もあるようだ。需要は回復しても、人手の確保がうまくいっていない状況だ。早く対策をしていかないと、大きな需要が期待できる5月の大型連休を乗り切れない。(名商が実施した)1~3月期の定期景況調査では、人手不足と認識している企業が47%と約半数を占めた。募集しても人手がなかなか集まらない状況にあるが、名商では採用活用の最新トレンドやメディアを活用した採用方法など紹介するセミナーや、教育機関と会員企業の就職情報交換会などを実施し、中小企業の採用活動をサポートしている。少しでも会員企業の採用活動にお役に立てるよう支援に努めたい」

「このほかの懸念材料としては、不安定な国際情勢や、各国の金融引き締めによる世界的な景気後退懸念がある。名商の70人の経営指導員による巡回や、窓口相談を軸にしながら、中小・小規模事業者に寄り添った『伴走型支援』を積極的に行っていく」

―取引価格の適正化と賃上げによる経済の好循環が望まれている。

「会員企業向けの直近の調査(2月16日~3月3日)では、価格転嫁について、増加したコストに対して50%以上の価格転嫁を実施できた企業は約20%となり、前期調査から約10ポイント減少した。一方で、20%未満の価格転嫁を実施できたという階層は増加した。エネルギーコストや原材料価格の波状的な上昇により、新たな価格改定交渉が間に合わず、価格への未転嫁部分が増大したものと考えられる」

「2月27日には、県内の官民・労働・金融の12団体で、適正な取引・価格転嫁に関する『共同宣言』を発出した。価格転嫁を進めるには、下請け事業者が勇気を持って、交渉を行うことも重要だ。引き続きそうした声を上げやすい環境づくりを進め、適正な取引・価格転嫁による企業の持続可能な経営をサポートしていく」

「今後も地域の実態を把握に努め、事業者の生の声を行政機関へ伝えるとともに、『パートナーシップ構築宣言』の普及とその実効性を高め、価格転嫁をしやすくなるような環境を整え、経済の好循環に貢献できるよう取り組みたい」

―賃上げに関しては。

「可能な企業には積極的に取り組んでもらいたいが、収益悪化や先行き不安から賃上げができない企業も多い。賃上げを進めている企業も、原資の有無にかかわらず、人材の維持・確保のため、いわゆる『防衛的賃上げ』を進めざるを得ないところもあるようだ。やはり経済全体を底上げするには、物価上昇を上回る賃金の引上げを実現し、個人消費を活発にする必要がある。大企業で広がった賃上げの輪を、中小企業にまで波及させ、経済の好循環を実現していくことが大切だ。自発的かつ持続的な賃上げが可能となるよう、価格転嫁や生産性の向上などとともに、新たなビジネス、付加価値の創出に向けた取り組みに力を入れていきたい」

「中小企業、小規模事業者は、大企業と同じようなタイムスケジュールで賃上げができないところは、原資の確保をきちんとやった上で行うべきだ。時期が遅れてでも賃上げの流れにつなげていくことが大事ではないか。少し長い目で考えないと、賃上げの流れは浸透しない。向こう1年は動きをみていく。賃上げが消費を呼ぶ、経済の好循環がスタートを切れるかどうかは、今年に懸かっている。中小、小規模事業者も1年をかけて、賃上げの波の状況をつくり出し、2024年以降も好循環を生み出していくのが理想的だろう」

―経済の発展に向け、克服すべき短期的、中長期的な課題は何か。

「目下の課題としては、新型コロナの感染症法上の5類の引き下げが5月8日に予定されている。コロナ禍を乗り越えて、成長していく『ビヨンドコロナ』対策を円滑かつ混乱なく進めていくことが最大の経済対策であると考えている。今秋には、ジブリパーク第2期エリアの開業が控えている。地域の魅力ある観光資源とともに国内外に発信し、観光・サービス業の回復につなげていく必要がある。中部国際空港でも、国際線の新規就航や再開、増便が相次いでいる。インバウンド(訪日外国人)需要の増加も見据え、受け入れ体制を整えることも求められる」

「中長期的な課題では、100年に一度の大変革期にある自動車産業の動きに対応するとともに、医療機器、航空宇宙などの次世代産業の振興を図る必要がある。次世代自動車を担う高機能素材の展示イベントなどを実施するとともに、医療機器分野では『メディカルメッセ』、航空宇宙各分野では国際展示商談会『エアロマート名古屋2023』などの事業を通じ、各分野への参入を支援したい」

「カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)の実現に向け、中小企業の対応も不可欠だ。展示イベントなどを通じて活動の輪を広げるとともに、環境関連ビジネスの振興を図る商談会なども開いていきたい」

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